2022年02月28日更新
PickUp記事:ソーセージ「巾着袋」業界全体で見直し NB、PBとも変更へ流通も協力 プラ削減目指す(食品新聞2022.1.28)
昨今、プラスチックごみとSDGsとの関連性が世界的に注目されていますが、食肉加工業界では、製品パッケージに使用されているプラスチックを削減しようと、業界を挙げた取り組みに着手し始めました。
日本食肉加工協会と日本ハム・ソーセージ工業協同組合が、メーカーなどの業界関係者に向けてソーセージパッケージの見直しを提案しましたが、それを受け、複数の企業がパッケージの変更を開始しています。
現在主流となっているソーセージのパッケージは、巾着袋型で見栄えが良く、2個1セットでのバンドル販売によるお買い得感も相まって、この30年ほどの間、すっかり定着していました。
ただ、パッケージを巾着状にするために、商品を包む分以外の余剰プラスチックが使われており、SDGs貢献の観点から、今回、新しいタイプのパッケージへ切り替えるよう、業界一丸で取り組んでいく予定です。
業界一体でパッケージ切り替えに取り組んでいけるよう、両団体は、各メーカーだけでなく、流通関係者の理解を得ることにも配慮しており、その結果、プライベートブランドを含めた全商品で、パッケージの変更が進められるようです。
すでにパッケージを新しくした日本ハム株式会社および伊藤ハム株式会社では、新パッケージにおけるプラスチック使用量は、従来のものから15~30%削減、さらに、商品体積の減少によって、輸送関連の負荷もおよそ10%軽減できると試算しています。
両団体では、上記2社以外のメーカーについても、追随するように切り替えを進めていき、4月末までに、多くのメーカーがパッケージの切り替えを行うと予想しているようです。
(引用:伊藤ハム株式会社HP)
今回、両団体が推進しているソーセージの新たなパッケージは、従来の巾着状のものから、中身を包むのに必要ではない部分、つまり巾着の結び目から上を中心に、使用するプラスチックを減らしてコンパクトな形態へと変更されたものになっています。
今年2月から、この新パッケージへの切り替えを実施している伊藤ハム株式会社では、そのメリットについて、以下のように述べられています。(詳細についてはhttps://www.itoham.co.jp/news/?itemid=1255&dispmid=1869)
・プラスチックの使用量削減
巾着状パッケージと比べて、約30%の削減。
・各種輸送負荷の軽減
配送用段ボール1箱に入るパッケージ数が1.2倍に増加(10個から12個)したことで、輸送効率が改善。また、1箱ごとの車両積載可能重量の増加によって、物流効率も改善されるため、使用するトラック数の削減など、輸送による二酸化炭素の排出量軽減も期待できる。
上で挙げられているプラスチックや二酸化炭素は、SDGsに掲げられている海洋汚染の防止や気候変動の抑制に、大きく関わっていることが知られています。
具体的には、
・海洋汚染の防止、削減
プラスチックは、海洋汚染の原因であるマイクロプラスチックの発生源であり、プラスチックごみの削減によって、海洋汚染防止につながる。
・気候変動の具体的な対策
ガソリンや石油などの化石燃料の使用を減らすことで、地球温暖化の原因である温室効果ガス(二酸化炭素、メタンなど)の排出を削減し、気温の上昇や異常気象などを抑制する。
以上から、製品の脱プラスチックや、二酸化炭素排出量の削減は、SDGsに役立つ行為であると、国内外から注目されています。
また、今回の事例は、業界そのものを巻き込んだ取り組みとなっているため、一企業の活動にとどまることなく、規模のより大きなSDGs貢献が見込めることが予想されます。
事実、業界に加えて、流通関係者の理解と協力を得ることで、ナショナルブランドの商品に加えて、プライベートブランドの商品でもパッケージ変更が推進される運びとなっており、まさに業界一丸で、SDGsに寄与していこうと言う強い決意がうかがえます。
とは言え、実際にパッケージ変更を行うかどうかについては、各メーカーの自主性に任されているようです。
先にも述べたとおり、業界大手の日本ハム株式会社や伊藤ハム株式会社は、2月1日以降、新パッケージへの切り替えを進めています。そして、この2社の動きを他のメーカーが追随して、多くの企業で新パッケージへの切り替えが行われると予想されています。
現在、地球環境への悪影響が問題視されているプラスチックごみですが、より環境にやさしい紙などの素材に代替した製品の開発や、使い捨てずに再利用を促すような商品開発などを通じて、様々な企業が脱プラスチックを積極的に進めています。
今回、食肉加工業界が、「業界一体」でプラスチック削減に取り組むと言う、大きな動きが見られましたが、業界全体でパッケージ変更を行おうと言う、食肉加工業界のSDGs対応を受けて、今後、食品業界がどのような動きを見せるのか、そしてまた、食品業界外にも何らかの影響を与えるのか、など、今後の動向が気になる事例と言えるでしょう。