2019年07月22日更新
全国に1,000か所以上存在する「道の駅」。あなたも一度はドライブの休憩に寄ったことがあるのではないでしょうか?休憩・食事のための施設が存在し特産品やお土産物が多く取り揃えられています。ドライブの休憩所としての道の駅から「まちの中核拠点」へ変貌を遂げる取り組みが始まっています。果たして変貌を遂げることはできるのでしょうか?その具体的取り組みの中身とはー。
PickUp記事:「道の駅が、地域を変えた。「道の駅つの」は年間70万人来訪、所得・税収UPに貢献 etc.」(NATIV.2019.01.12)
「道の駅」とは、安全で快適に道路を利用するための道路交通環境の提供、地域のにぎわい創出を目的とした施設のことを言い、「地域とともにつくる個性豊かなにぎわいの場」を基本コンセプトにしています。現在、全国に1,145か所存在しています(2019年1月現在)。
その成り立ちは、一般道のドライブの休憩場所として始まりましたが、現在では、休憩機能の他に地域の連携機能、情報発信機能があるとされています。そしてそれは、外部からの訪問者の入り口としての地域ゲートウェイ機能、住民生活の拠点となる地域センター機能としても捉えられます。
国土交通省では、2014年より、地域創生の中核となる特に優れた企画を選定し、全国モデル道の駅、特定テーマモデル道の駅、重点道の駅に認定、支援を行っています。
道の駅設置所在箇所
(引用:地図蔵)
全国の道の駅が1,000か所を超えましたが、その数は現在も毎年10か所以上増え続けています。1施設の平均年間売り上げは、約2億円と言われていますが、全体の約3割の道の駅が赤字と言われています。そして、地方公共団体から指定管理料が支払われなければ、その割合はもっと多いと言われています。
その原因は、運営体制にあると考えられます。すなわち、道の駅は地域公共団体の第3セクターとして運営されることが多く、赤字が補填されることも多いため、経営努力がなされにくくなっています。また、他地域の模倣のみで、独自の魅力の開発を行っていない道の駅も多く、客のリピート訪問に繋がりにくくなっています。
道の駅登録件数推移(1993~2018)
(データ出典:国土交通省)
そんな中、上手くいっている取り組みが、今回取り上げた「道の駅つの」です。記事本文にもある通り、町の主要産業である畜産が口蹄疫による壊滅的な被害を受け、道の駅を中心とする中心市街地の活性化に取り組みました。このままでは町が無くなるかもしれないとの危機感が住民全体に共有されたことで、道の駅の運営主体が、農協・漁協・商工会が共同出資して設立した「株式会社まちおこし屋」となりました。
この点がこの取り組みの最大の成功要因に思えます。すなわち、徐々に人口が減少しぼーっとした危機感を抱いていても、現状が急変するような衝撃的出来事に出会わないために、取り組みに本腰が入らない地域が本当に多いものです。共有された危機感が無いために、地域内での対立や足の引っ張り合いが続いているのです。現状に対する危機感を共有し、住民が一体となって課題に取り組む姿勢が成功を呼び込みます。
また、行政が取り組みを行う旗振り役を演じつつも、第3セクターではなく、民間の農協・漁協・商工会という経済団体が共同出資した会社が運営主体となっていることも大きな成功要因です。すなわち、上述の第3セクターの弊害を避けられ、民間のノウハウを活かしつつ、本気となって利益を上げることに取り組むことが期待できるためです。
さらに、共同出資を行ったのが2団体ではなく3団体であったのも重要です。すなわち、2団体の場合よりも意見の調和が取りやすく、1団体の自分勝手な暴走を止めやすいため、総力的に取り組むことができるためです。
道の駅に関しては、新たな動きがあります。その一つが積水ハウスとマリオネットの取り組みです。
両社は、国内の各自治体と連携し、「道の駅」を拠点とした地域創生事業「Trip Base道の駅プロジェクト」を立ち上げ、第一段階として道の駅に隣接したロードサイド型ホテルを2020年秋以降に5府県15か所で開業することを発表しています。すなわち、そのホテルを拠点として自動車、バイク、自転車などで地域を巡りながら地元との交流を楽しむ旅を提案していくこととしています。そして、レンタカー、バイク、カーシェアリング、自転車、農業、メディアなどのプロジェクトに賛同するパートナー企業とアライアンスを組み、将来的には協議会を設立して事業を拡大していく方針も明らかにされています。
この取り組みは、昨今の地方での訪日外国人観光客の宿泊需要の高まりを反映したものです。
また、違った形で観光拠点となることを目指しているのが、重点道の駅米沢です。
同道の駅は、山形県内初の重要道の駅に選定され、置賜地方を中心に全県、県外の近隣都市の観光案内機能を担うこととしています。施設は、2018年4月にオープンし、半年で100万人の来客を達成しました。施設内の案内所に外国語に対応できる観光コンシェルジュを常駐させたり、旅行業登録をして旅行商品の開発も手掛けています。注目すべきポイントです。
また、来客に地域内を周遊させるべく、割引が受けられる各商店を紹介した「まちナビカード」というものを準備し、地域に経済効果を波及させる取り組みを行っています。
同道の駅は、米沢中央IC近くに立地しており、来客は県内が4割、県外が6割となっています。そして、福島からが3割を数え、米沢―福島間を無料で通行できる東北中央道の効果が大きいものと考えられています。
ロードサイドホテルイメージ 道の駅米沢の外観
(引用:TRAVEL VOICE HP) (引用:米沢市役所HP)
これまで見てきたように、道の駅を巡っては様々な取り組みが進行中です。一昔前の単なる「休憩場所」ではなく、まちや地域の賑わいを創出する「中核拠点」へと発展を遂げようとしています。
その中で、道の駅の数は1,000施設を超え、規模の大小を問わず、今後は生き残る工夫が必須です。道の駅にどうやって来客してもらうか、その経済効果をいかに地域に波及させるかが重要です。具体的には、地域の特色のあるコンテンツの開発、誘客の仕掛け、地域内連携、他の道の駅との連携が必要になってきます。赤字の道の駅は、わざわざ訪問したくなるような道の駅にするために、いかに道の駅の魅力を高めるかが大切です。他地域の真似は論外です。基本姿勢として、行政から支払われる指定管理料に頼らないことは当然です。事例でも見たように、地方に賑わいを取り戻すためには、道の駅が事業に観光を取り入れることは今後必須であると思われます。
もう聞き飽きたでしょうが、日本は、少子高齢化、人口減少に突入しています。そのため、ドライバー人口もどんどん減っていくことになります。とすれば、車で訪れなければならない場所は、誘客が困難になっていくでしょう。それを解決する手段として自動運転車が大きな力を発揮するかは、まだわかりません。ですが、来るべき未来の課題に向けて、その対策を練るのに早いに越したことはないでしょう。
今まで見たことが無い道の駅の新しいカタチに発展することに、大いに期待しています。