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岩手 学び舎が新たな交流拠点に!閉校校舎の再活用で地域の賑わいづくり!

2019年11月06日更新

現在、日本全国で活用されていない廃校が増え続けています。何の特徴もない宿泊施設や単なる地域の集会所となっている廃校が身の回りでも多いのではないでしょうか。しかし、年間14万人を超える来訪者を呼んだ再活用事例も現れています。それでは、私たちは、有力資源である廃校をどのように活用していけばいいのでしょうか?地域に賑わいを取り戻すためには。再活用の具体的事例とはー。

PickUp記事:「閉校校舎から魅力発信 宮古「里の駅おぐに」オープン」(河北新報2019年7月18日)

2002年から約8,000校が廃校に。

 平成31年3月15日に発表された文部科学省の平成30年度廃校施設等活用状況実態調査によれば、平成29年度に発生した廃校は358校にのぼり、平成14年度から平成29年度の間に発生した廃校の総数は7,583校であると報告されています。その7,583校のうち、74.5%の施設が活用されている一方、25.5%の施設が活用されていません。都道府県別にみると、2位の東京都を2倍以上も引き離し、北海道で760校が廃校になっています。   

 そして、まだ公表されていない平成30年度分・31年度分の廃校数を考慮に入れれば、2002年から現在までの廃校の総数は、約8,000校になると推定されます。

 活用されているものは、社会体育施設、社会教育施設、企業や法人等の施設、体験交流施設等として利用されていますが、過疎化の進む地方において新たな賑わいを生むために有効に活用されている事例というのは、まだあまり多くないのが実態です。

 施設は、活用されなければ早く老朽化が進むうえ、治安悪化も懸念されるため、いかに有効活用を行うかが日本の大きな課題となっています。

公立学校の年度別廃校発生件数(平成14年度~平成29年度)

(引用:「平成30年度 廃校施設等活用状況実態調査の結果について」文部科学省)

地域の中と外と繋ぐ「里の駅おぐに

今回の取り組みは、廃校になった校舎を、交流促進施設として再活用し、その運営に住民が当たるという取り組みです。10年ほど前から閉校になる校舎の活用策について、行政と住民との間で検討が行われてきました。そして、この地域と遠野市を繋ぐ国道340号の改修も見据えて、校舎の活用策が練られてきました。

施設活用の具体策は、改修及び立丸トンネル開通により、交通の便が向上する国道340号を利用するドライバーの休憩施設として、産直販売所として、観光情報発信所として、地域住民の交流施設として、利用されることを見込んでいます。

フードコートでは蕎麦が提供されていますが、小国振興舎ではこの蕎麦の栽培にも挑戦してきました。

この取り組みは、廃校となる校舎の改修を宮古市が行い、その管理を特定非営利活動法人「小国振興舎」が行う、指定管理者制度を利用しています。

そのため、実際に開業するために必要な什器備品等は、小国振興舎が自力で調達しなければならず、その資金調達の方法としてクラウドファンディングが利用されました。

地域内外の交流の促進と、地域の魅力発信の役割が期待されています。

里の駅おぐに

(引用:宮古市HP)

廃校が水族館!?様々な活用法が話題に。

廃校の活用方法は、上述した社会体育施設、社会教育施設、企業や法人等の施設、体験交流施設等と言っても、様々なものがあります。中には廃校を水族館にした例もあります。むろと廃校水族館です。

むろと廃校水族館は、高知県室戸市室戸岬町の旧椎名小学校を改修したもので、教室には水槽が配置され室戸岬で捕れた魚が泳いでいます。プールにはウミガメが泳ぎ、跳び箱は金魚の水槽になっています。

2018年4月の開館から1年経たずに来場者数14万人を超え、今年のGW10連休には、高知県内2位の観光集客を達成。施設に豪華さはないですが、大きな反響を生み着実に地域の賑わいづくりに貢献しています。

大企業が廃校の活用に関わっている事例も増えてきています。

淡路島の野島小学校跡地は、人材派遣大手パソナグループがその活用に乗り出し、自然やアート、美味しい料理が楽しめる複合施設「のじまスコーラ」として生まれ変わりました。

また、北海道夕張郡栗山町の旧雨煙別小学校は、コカ・コーラ教育・環境財団が関わって再活用に漕ぎつき、自然環境や農業環境を活かした体験型の環境教育プログラムを構築・展開する「教育の場」として現在運営され話題を呼んでいます。

教育と言えば、子供の仕事体験施設「キッザニア東京」の設立に関わった油井元太郎氏が携わるMORIUMIUSも人気の施設となっています。この施設は、宮城県石巻市雄勝町の旧桑浜小学校を再活用。山、海、森の自然の中で様々な体験プログラムが用意されています。

企業がオフィスとして使用する事例も増えています。IID世田谷ものづくり学校は、東京都世田谷区旧池尻中学校を再活用したもので、事業者がオフィスとして利用するだけでなく、地域コミュニティ・イベントのスペースとしても利用することができます。誰でも通える学校をコンセプトとしており、ものづくりをテーマにしたワークショップ、セミナーは年間700回以上開催されています。

今回取り上げた事例と同じように、「道の駅」として再活用がなされた廃校もあります。千葉県安房郡鋸南町旧保田小学校は、「道の駅 保田小学校」として生まれ変わり、体育館を使った直売所、教室で食べることのできるレストラン、温浴施設や宿泊施設まで兼ね備えています。

このほかにも、起業家が集まるコワーキングスペース、工場、アートギャラリー、水耕栽培施設など、再活用方法は様々です。

むろと廃校水族館(引用:ひがしこうちHP)      のじまスコーラ(引用:マイナビニュース)

 

コカ・コーラ教育ハウス(引用:くりやま自然情報サイト)  MORIUMIUS(引用:COLOCAL)

         

世田谷ものづくり学校(引用:IID HP)     道の駅 保田小学校(引用:鋸南町HP)

 

いかに人を呼び込めるか

今回のテーマは廃校の再活用でしたが、廃校再活用の最終的な目的は、地方創生・地域の賑わいづくりです。そのためには人を呼び込む再活用方法を実施しなければなりません。

しかし、廃校になるということは人口減少・過疎化が原因ですので、来訪者の方に「わざわざ」訪れてもらう必要があります。

一方で、廃校には強みも存在します。それは、旧校舎であるため、大きな建物、校舎付属物、広い校庭がある点です。また、誰もが学校に通った経験があるため、愛着、親しみ、懐かしさを多くの人が共有している点です。

再活用方法検討の際に、この強みを活かした施策アイデアを生み出す必要があります。

また、その地域の特徴・強みを活かし、廃校の強みを掛け合わせることで、ユニークな施策を実施できるのではないでしょうか。

次に、継続性のある施策である必要がります。一度切りのイベントのように人を呼び込んでも、地方創生とはなりません。この点、人にわざわざ来訪させるだけの話題性は必要ですが、一度で飽きられてしまう内容では、継続的とは言えないでしょう。

継続性という点では、初期コストにも注意を払う必要があります。初期コストがかかりすぎれば、事業継続のための必要集客数が増えてしまい、自らの首を絞めることになりかねません。

一番重要なのが、地域住民の力です。住民が運営主体とならないまでも、主体的に運営に関われる仕組みを生み出すことが出来れば、自ら進んで事業を助けてくれることでしょう。そのことが、地方創生の観点からも一番地域の関係性を深め、にぎわいづくりになるのではないでしょうか。

廃校を遊休資源にしないために

今回取り上げたいくつかの事例のように、廃校の活用が上手くいけば多くの来訪者を生み、地域活性化の大きな一手となることも夢ではありません。仕組み次第でその地域に地域外のお金が多く落ちることになります。

その仕組み作りのためには、廃校の再活用の取り組みのみならず、住民が一体となって地域全体の魅力を高めていく必要があります。すなわち、点ではなく面での魅力発信が重要です。今後、この面での魅力発信に力を入れていく必要があるでしょう。

そういった取り組みを一つ一つ積み重ねていくことで、その地域への移住希望者も増えていくことになります。

これからの地方創生は、廃校の再活用がポイントとなっていくことでしょう。