2022年07月11日更新
近年、SDGsや災害時の非常食などの観点から、食物アレルギーの有無に関係なく食べられる食品の需要が高まっています。
このような背景の中、学校を通して食物アレルギーに関心を持ってもらおうと、食物アレルギー配慮商品を開発する食品メーカー5社(オタフクソース株式会社、ケンミン食品株式会社、株式会社永谷園、日本ハム株式会社、ハウス食品株式会社)は、食物アレルギーに関する副読本の配布やオンライン出前授業の実施などの啓蒙活動を行っています。
これらの活動は、上記5社が協同で取り組む「プロジェクトA」の一環で、食物アレルギーの啓蒙によって、「食物アレルギーの有無にかかわらず、みんなで食事をおいしく楽しめる社会の実現」への貢献を活動理念としています。
「食物アレルギーの症状は、大人よりも子どもにあらわれる傾向がある一方で、子どもの頃に食物アレルギーについて知る機会は多く」ないことから、同プロジェクトでは、2021年から小学校向けの食物アレルギー啓蒙活動に着手してきました。(詳細については、https://www.otafuku.co.jp/product/otafuku_allergy/pja/)
授業に参加した児童からは、「食物アレルギーのある友達へ食べ物をあげるときには必ず表示を確認しようと思った」など、今後の行動につながるような感想も出ているそうです。
このように、子どもを対象とした食物アレルギーの啓発によって、子どもたちの日常的な行動に変化がもたらされる可能性が示唆されました。
このことから、食物アレルギーを持つ・持たないに関わらず、子どもたち皆を対象にした啓蒙活動は、学校のようなコミュニティ全体における食物アレルギーへの関心に影響すると予測されます。
また、日本は地震の多い国で、以前から災害対策に力が入れられてきました。
近年では、誰にでも迅速に非常食を給付できるようにと、自治体などの行政や学校の備蓄食糧にアレルゲンフリーの食品を選んだり、ローリングストック法を広めて、家庭での非常食の備蓄を推奨したりするなどの動きも活発になっています。
これらの対応は、すべての人が食糧に困らないことを目標のひとつとしているSDGsの概念にも通じるものです。
そして、今回の取り組みもまた、あえて対象を限定せずに子どもたち全員に受講してもらうことで、結果、社会全体の食物アレルギー認識向上に寄与していると思われます。
社会全体に食物アレルギーを啓蒙しようとする今回の取り組みは、災害対策やSDGsなどに貢献するだけでなく、新たなビジネス機会の創出にもつながるものであり、社会と企業の両方にメリットをもたらすでしょう。
(引用:厚生労働省・一般社団法人日本アレルギー学会 アレルギーポータルサイト-食物アレルギーより)
今回、小学校で実施されたオンライン出前授業は、上に挙げた食品メーカー5社が協同で取り組んでいる「プロジェクトA」によるもので、その目的は食物アレルギーの啓蒙です。
食物アレルギーとは、ある特定の食べ物を食べたり、触れたりした後にアレルギー反応があらわれる疾患のことで、重篤な事例では、生命の危機にまで及ぶ可能性があります。(詳細については、https://allergyportal.jp/knowledge/food/)
食物アレルギーの症状は子どもに現れることが多く、アレルギーを持つ可能性は、乳幼児で5~10%、学童期以降で1~3%と考えられているそうです。
食物アレルギーを起こす原因となるのは、「アレルゲン」と呼ばれる物質ですが、主に食べ物に含まれるタンパクのことを指しています。
アレルゲンは数多く存在していますが、そのうちの特定の品目については、以下のように、食品表示法で表示が義務づけ、あるいは推奨されているため、注意が必要です。(詳細については、消費者庁「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」令和3年3月作成 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_210514_01.pdf)
<表示が義務づけられているアレルゲン>
特定原材料7品目:
えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
<表示が推奨されているアレルゲン>
特定原材料に準ずるもの21品目:
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、 牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
また、食物アレルギーが問題になるのは、日々の食事だけではありません。非日常である災害時も食糧は必要であり、非常食についても、食物アレルギーに気をつけることが重要と言えます。
災害対策の一環として、家庭における食糧備蓄を推奨するとともに、その具体的な方法のひとつのローリングストック法について、国は情報を発信しています。
(詳細については、https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/index.html)
ローリングストック法とは、日常的に使っている食品を多めに買い置きし、古いものから消費しながら、消費した分だけ買い足すことで、備蓄食糧を維持する方法です。
この方法の大きなメリットのひとつは、普段から食べている食品を備蓄する手軽さでしょう。
非常時以外に食べる機会のない、いわゆる「非常食」とは異なり、いつも食べている食品の中から、賞味期限の長いものを選び、多めに購入するだけで、非常用の食糧備蓄が整うので、非常食のように、特別なタイミングでの買い替えを行う必要がありません。
また、日頃から食べ慣れているものなので、非常事態に陥った際にも、
・食べ方がわからない
・味に慣れていなくて、食べにくい
など、災害時の食事に関する心配やストレスを少なくできるでしょう。
つまり、ローリングストック法であれば、いざという時、備蓄していた食品の期限が切れてしまって食料不足に陥ったり、いつの間にか食糧が食べられなくなって捨ててしまったりと言った状況を避けやすく、災害に備えやすいのと同時に、資源活用もしやすくなる、と言う訳です。
また、アレルゲンフリー食のような特殊食糧については、非常時には手に入りにくくなると予想されています。
実際、アレルギーのある人に対しては、家庭での備蓄が特に推奨されており、国が提示する備蓄量もまた、「少なくとも2週間分」と、より多めです。
(詳細については、https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/foodstock/imadoki/imadoki11.html)
このように、日常の食事から災害時の非常食まで、幅広い場面で食物アレルギーは重要となる訳ですが、その積極的な啓蒙活動を進めているのが、食品企業5社が参加する今回の取り組み、「プロジェクトA」になります。
本プロジェクトでは、企業連携による継続的な活動を通じて、食物アレルギーのある人だけでなく、学校や職場など周囲の人々を含めたコミュニティへの食物アレルギー啓蒙等を実施しています。(詳細については、https://www.otafuku.co.jp/product/otafuku_allergy/pja/news/2022-04-26.pdf)
具体的には、企業で連携しながら、食物アレルギーに関する情報発信や啓発活動、アレルギー配慮商品等の普及活動を展開しており、今回、学校と言う教育現場で食物アレルギーの理解・関心を深めようと、副読本やオンラインによる出前授業を開催しました。
「子どもたちが食物アレルギーを知り、自分でできることを考えて行動するようになること」を目的に、副読本を活用した授業の中で、クイズを出したり、実際に食物アレルギー配慮商品の食品表示を見たりして、食物アレルギーや表示の見方などを子どもたちに学んでもらったところ、
「いろいろな食物アレルギー配慮商品を作っていることを知って驚いた」
「表示の見方がわかった」
「食品パッケージに気を付けていきたい」
「今度いろいろな商品の原材料名を見てみたい」
など、食物アレルギーに興味を持ったと言う感想が、参加児童から得られたほか、
「食物アレルギーのある友達へ食べ物をあげるときには必ず表示を確認しようと思った」「安心して食べて欲しいから食べ物について調べたくなった」
など、今後の行動の変化につながるような感想もあったそうです。
前述したとおり、食物アレルギーは、子どもの頃に発症しやすいことが知られています。
また、子どもを取り巻く、次のような食環境を鑑みると、アレルギーの有無に関わることなく、そして子どもを含めた全員を対象に、食物アレルギーの正しい知識を啓蒙していくことは、非常に重要と思われます。
・学校給食
・家に遊びに来る子どもに供する飲食物(おやつなど)
したがって、子どもも含めたコミュニティ全体に対する啓蒙に取り組む「プロジェクトA」の社会的意義は大きく、子どもへの啓発を今後も継続していくことは大事なことと言えるでしょう。